偽物じゃないか本物の

例えば床屋や美容院で着せられる服のようなカバー。着る瞬間はとても印象的だけれど、脱ぐ瞬間のことを覚えているだろうか。覚えていたとして、それは今までにそれを脱いできた回数のいったい何割だろうか。例えば眠る瞬間、その時のことをどれだけ覚えているだろうか。例えば水を飲む瞬間、視線は何処にあるだろうか。昨日から今日に変わるという事はどういうことだろうか。漸次的に移行して行く変化なのだろうか。もっと劇的な変化があるだろうか。「愛と笑いの夜」においてトラック6からトラック7切り替わるときのような静かな変化なのか、はたまた「海へ行くつもりじゃなかった」においてトラック9からトラック10になだれ込む時のような鮮やかなドラミングなのか。少なくとも昨日、スーパーでコーヒー牛乳を買った時ほどビビッドではないと、コーヒー、コーヒー牛乳を交互に飲み比べながら思う。小学校の恩師からの年賀状が実家から大量の物資とともに転送されてきて、再びコーヒー牛乳を飲む。この味は、偽物じゃないか本物の、と思う。