ラーメン屋で「麺やわらかめ」を頼める人は、秋刀魚のわたでビールを飲める人くらいに大人だと思う。

貼り付いている紙と紙をはがす作業が得意でない。例えば、牛乳パックを開けたり、トイレットペーパーを出したりする類いの作業である。

潰れる古本屋の半額セールでたまたま松浦理英子の「親指Pの修業時代」を手に入れたので、バレーボールの授業に行くのをやめて半分ぐらい読んでみたが、特異な設定をしたことだけで(まさしく親指がPになったというそれだけである)作者が満足してしまっているような感があってなんとも先を読む気にさせない。主人公の思考、言葉は岡崎京子の漫画に出てくる主人公よりもつまらない。というか鋭さがない。そして、状況に鋭さや奥行きを加える人物も出てこない。ホモやヘテロ、ということがテーマになっているがどうでもいいと感じてしまう。設定の情報が一人歩きして、売れてしまったのだろう。休憩がてら昼ご飯を食べながら、小学校の高学年の頃に市立図書館で親指Pのエッチなシーンのところだけを拾い読みしたことがあるのを急に思い出して、サッポロの塩ラーメンに胡麻を入れるのを忘れた。文体や構成の完成度の点などからやっぱり「裏ヴァージョン」のほうが小説として断然面白いし、哀しい。作家自身が抱えるテーマが良く顕在化していると思う。あまり売れなかったというナチュラルウーマンのほうを読んでみたいと思う。ところで、決して世相を表すようなことは書かれていないのに、小説全体が妙にバブリーな感じなのはなぜだろう。トレンディドラマ風というか。「性」というテーマをおおまじめに語っているあたりが、90’s 80’sの空気感なのかもしれない。岡村靖幸の歌の歌詞みたいに。景気が後退すると、りっしんべんが取り去られ、問題はもっと根源的なほうへと向かってゆく。

親指Pの文体がぎこちないと感じたのは、その前に枡野浩一の「君の鳥は歌を歌える」を読んでいたからかもしれない。この人は感性が先を読みすぎる。松尾スズキリリーフランキーっていう00年代前半のキーワードにいち早く目を付けていたんじゃないだろうか。「うわさのベーコン」の噂はかねがね聞いていたが、ますます読んでみたくなる。ブックオフに行ったら探す本リスト入り。自分で見つけて言いたかった言葉がたくさん出てくるのがくやしい。「すけべ人間マジメ君」とか。いや、それだけじゃないけど。とりあえず、アンチ太宰治の大人に対する彼の意見はチクッとくる。そして確かに、金木犀が満開のこの時期の街は、子供や酔っぱらいがそこらじゅうに立ちションをしかねないほどに街中トイレの匂いだ。

荒井由実の魔法の鏡をパロディにした漫画を江口寿史が書いているらしいということが「君の鳥は歌を歌える」に書いてあったが、そういえば、たまたま知り合いになった漫画研究会という眉唾サークルの部長に「ストップひばり君」の話をしてもさっぱり伝わらなかったので、「ろくな漫画読んでないですね」と言ってしまい、気を悪くされたのを思い出した。なんにしろ、魔法の鏡は良い曲です。
iTuneのウインドウを一番小さいサイズにして表示するとかわいい。

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