ここはいっちょ勝ちにいくつもり

「歩いても、歩いても」という映画を見る。公開直後、宮台真司ダ・ヴィンチの連載でやたら褒めていたことで覚えていた。今はもうその連載も無くなっているが。
ある家族が実家に帰省する一泊二日を描いた物語だが、状況が僕の母方の祖父の家と似すぎていて、帰省すると祖母や母がする会話だとか、家と医院が一緒の間取りになっているところだとか、祖父が人を避ける感じだとか、父が昼寝をする感じだとか、孫兄弟がはしゃぐところだとか、孫がゲームする感じだとか、そういうものが全て似すぎていて、京浜急行や京浜バスなんていう半年前まで乗っていたのにもはや懐かしいアイテムかがちょくちょく出てきて、なんともいいがたいせつなさを覚えた。ましてや7年前に僕の祖父は亡くなっているのだ。
作品自体は樹木希林の手の動きを見る映画だとも言えるし、東京物語のオマージュだともとれる。一泊二日で10人に及ぶ人間模様を描ききっている。その人間のそれまでやその後を感じさせる映画だ。映画の前や後を感じさせる映画が素晴らしいと言っていたのはやはり小津だったか。夏休みの終わりにうってつけの映画が見れた。

中古レコ屋のバイトの面接に行ったら、ブラジル音楽のディスクガイドと、ブラックミュージックのディスクガイドをずしりと渡されて、計1700枚に及ぶレコードを来週までにできる限り暗記してこいと言われた。開いてみると、知らないアーティストの知らないアルバムがずらずらと並んでいる。ライナーノーツも音が無ければ退屈である。ブラジル音楽に至ってはポルトガル語のタイトルの読み方もままならない。でもこうなったら俄然やるっきゃないのである。ここはいっちょ勝ちにいくつもりなのだ。