今思い出したこと、小川洋子の肉襦袢はがし。

あ、忘れた。
あ、思い出した。10月のある日にサイコロにまかせて東京23区をめぐる旅(後編)をした日のこと。前々日かその前の日かその前の週に僕は小川洋子という人が書いた文章をZ会の国語の問題で読んでいた。その文章は数学者と作家を比べて「似ていますね」なんていう浅はかな文章で、数学者に対する冒涜以外の何物でもないという感想を備忘のために答案感想欄に書いておいた。実際のところは「博士の愛した数式」という彼女の小説は題材としても少しいいなと思っていたのだけれど。そしてその日、一緒に行った3人が朝の7時から両国でラーメンを食べ出したので、僕は待っている間駅の周辺で通勤ラッシュにもまれながらガムを噛みつつ汚い街を散策していた。そこでふと目に留まったのが金光教支部で、そこにあった掲示板にはってあった「金光教新聞」みたいなやつに「小川洋子さんなんたかんんたらなんたらかんたらなんたらかんたら」おっきく書いてあった。金光教は日本史の教科書に載っていて、センター試験にも出てしまうくらい有名な新興宗教だけれど、別にどこでも変わらないなぁと思って、反面よく信じられるなぁとなぜだかちょっとうらやましくも思い、よくよくその「金光教新聞」みたいなやつの写真を見るともう作家としての役割は底にはなくアジテーションの道具としての人間がいるだけで、ああ、ガムもう味なくなってきたな、と僕は思った。信じるという事は相対的に考えれば信じないという事でもある。そしてまた朝から油をしっかり摂取して興奮気味の3人に合流したのである。そしてその翌週か翌々週の週末の朝、ラジオをつけると小川洋子がいきなり出没して、不思議の国のアリスか何かについて語っていて、そういえば夏の初めにもこの番組を聴いてそのときオススメされていた稲垣足穂を読んだことを思い出した。それで凄くいいと思った事を思い出した。とてもくやしくて泣きそうになった。そんな事を思い出した。

ニコニコ動画スカパラのメンバーと小沢健二が微妙な踊りをしている動画がアップされていた。とっても良い。青木さんもまだ生きてるし。オザケンはまだ浅田彰みたいな髪型で浅田彰みたいな目つきをしているし。ビーバーパトロール時代である。アレンジもいいし。例えば「『ある光』のPVをYoutubeでよく見ます」と雑誌にコメントしていたあの写真の女の人はもう見ただろうか。これから見るだろうか。当のオザケンは見るだろうか。それでまた、素直にひねくれていた当時を思い出したりしてくれないだろうか。

錠剤もかみしめて蛇口もひねってもう間違いがないことやが隙を見せないやり取りにも嫌気がさして、アウフヘーベンしてしまった。もうレもファもソシャープも使えない。