本日のライブについて。

ジョン・スクワイアは「90年代はオーディエンスの時代になる」と言いました。彼がこれをどういう文脈の中で言ったのかはわからないけれども、たとえばひとつには聴衆が聴衆の観点から音楽を作るという解釈があるだろうし(サンプリングや再度のミックスダウンなど)ひとつにはさまざまな時代の音楽を経て聴衆の耳が肥えるということがあるだろうし、観客に愛される音楽(踊りやすいとかメロディがいいとか)が残っていくという解釈もあるだろうと思うのですが、けれども決してアーティストが観客に媚びるようになる、観客の知識に頼るようになる、という意味ではないだろうと思います。けれども演奏をする側としての僕らはついつい観客の知識に頼ってしまいがちで、聴衆が知らない曲ではほとんど何も勝負できない。ここで観客の無知を批判して「もっと音楽を愛してほしい」とかいうのは簡単だけれども、そんなことを言っているやつにかぎって大した知識も愛も持ち合わせていない部類の人間であって、人に聴かせるからにはオーディエンスの心をいかに操るか(感動させるか)ということが重要なのだと思うのですが、やっぱり人を感動させるのは難しいことなのだと痛感しました。構成力も演奏力ももちろん足りなかったけれども、それらとはいま一つ違う何かも足りなかった。いま一つ違うなにかとはなんなのかを明らかにする行為が僕の音楽に対する愛の正念場だと思います。