サイケデリック時間(お話)

むかしむかしあるところに頭でっかちの少年が1人おりました。彼は考える事が好きで、たまに学校を休んだりして始終ものを考えていました。あるとき彼は地球上の人間から1日1人1秒ずつ盗んだら、60億×1÷60÷60÷24÷365≒1140年で、それを効率よく配分することで1日で十数人がお亡くなりになってしまうということに最近気づき、どうしたら時間を盗めるのかということを学校を休んでほぼ一日中考えていました。そして半信半疑で結論を出した彼は翌日早速実行に移し、数時間で急速に年を取って死んでしまいました。彼は人々の日常の隅々にあってその意識の届かない瞬間を狙って掠め取っていきました。無意識の瞬間の存在を想起させる事によって生じる人々に時間の喪失感がそっくりそのまま彼の時間になっていったのです。あなたはこの前水を飲んだ瞬間、何を見ていたか覚えていますか?もし思い出せなければ、その時間は誰かに盗まれているのかもしれませんよ。